関東進出を機にリブランディング! くら寿司の高級業態「無添蔵」の戦略

阿波 岳 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)
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大手回転寿司チェーンのくら寿司(大阪府/田中邦彦社長)は527日、東京都目黒区に「無添蔵 中目黒店」(以下、中目黒店)をオープンした。「無添蔵」とは、同社の高付加価値型の店舗で、これまで関西に4店舗を出店。中目黒店は関東初出店の店舗となり、くら寿司はこれを機に「無添蔵」のブランディングを刷新した。そのねらいと今後の成長戦略とは。

くら寿司は5月27日、東京都目黒区に「無添蔵 中目黒店」をオープンした

「無添蔵」で都心部での出店攻勢に臨む

 「無添蔵」は2005年開業の「泉北店」(大阪府堺市)の1号店を皮切りに、「伊丹昆陽店」(兵庫県伊丹市)、「北花田店」(大阪府堺市)、「紀伊川辺店」(和歌山県和歌山市)と関西エリアに4店舗を展開している。

 無添蔵は通常の「くら寿司」とは一線を画した高付加価値型のフォーマットとして開発され、ネタに飾り包丁を入れたり、刷毛で醤油を塗るといった手間をかけた調理法や、仕入れ数が限定される高級なネタの提供を特徴とする。

無添蔵で提供される寿司はネタに飾り包丁を入れたり、刷毛で醤油を塗るといった手間をかけた調理法を取り入れている

 日本フードサービス協会の外食産業市場動向調査によると、外食市場全体の24年の売上高は対前年比8.4%増と、物価高による単価上昇が影響しつつも成長基調にある。また、ファンくる(東京都)の調査によると、消費者の約7割が「値上げがあっても外食の頻度は変わらない」と回答しており、インフレ下においても外食需要は根強い。

 しかし、回転寿司チェーン全体の店舗数は減少傾向にある。227月の4270店舗から237月には4224店舗、247月には4164店舗へと年を追うごとに縮小している。この背景には、とくに地方のロードサイドにおいて店舗が飽和し、事業縮小や撤退するケースが増えていることがある。

 こうしたダウントレンドの中で、くら寿司は、出店余地のある都心部への出店を強化する目的で、中目黒に「無添蔵」をオープンするに至った。人口密度が高いことに加え、旺盛なインバウンド需要の取り込みもねらった出店だ。

 中目黒店は59席(カウンター31席、ボックス7席)と通常のくら寿司の席数の6割ほどになっている。これは、都市部では郊外のロードサイド店舗に比べて用地確保が難しいため、省スペース設計を前提とした店舗モデルとなっているためだ。

店内のボックス席

 くら寿司取締役広報宣伝IR本部長の岡本浩之氏は、「都内は狭小スペースも多く、『無添蔵』の形態はそのような立地でも出店可能なモデルになっている」と説明する。

くら寿司取締役広報宣伝IR本部長の岡本浩之氏

 さらにくら寿司は今回の中目黒店の出店に際して、都市部の立地特性や高級志向の来店客ニーズに対応するため、「無添蔵」のリブランディングを図った。大きく変えたのが、内装デザインと提供メニューだ。

 まず内装については、従来の関西4店舗が「古民家」をモチーフにした内装を採用していたが、中目黒店は「大人の隠れ家」をテーマとしたシックな空間に刷新した。

中目黒店の内観

 

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記事執筆者

阿波 岳 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

大学卒業後、社会の荒波にもまれる日々を経験。そこで書籍や会報誌の編集に携わるうちに、メディア事業への興味が芽生え、今に至る。
趣味は喫茶店巡りと散歩。喫茶店での一杯のコーヒーや、街角の散策を生きがいとしている。
これまで全都道府県を制覇するという小さな目標を達成した。何かを極めたり、制覇したりすることには、なぜか人一倍の熱意を注いでいる。
最近の悩みは、ここ数年で増えた体重との戦い。健康の大切さを意識しつつも、喫茶店のコーヒーに合わせたスイーツや、ランチの大盛りがやめられない。今日もまた元気に「大盛で!」と注文しつつ、明日こそ控えめにしようと心に誓っている。

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