減塩商品の食卓出現頻度は増加傾向に、卓上調味料のニーズがとくに高く

文:倉田 悠(株式会社ライフスケープマーケティング カスタマーサクセス部)
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近年、健康志向の高まりとともに「減塩」は、食品業界において重要なキーワードのひとつとなっている。とくに、高血圧などの生活習慣病の予防意識の高まりを背景に、塩分摂取を抑えるための減塩商品が多く登場しており、売場でもその存在感は日常的なものになった。

そこで今回は、食MAP®データを活用し、減塩商品の消費実態を探っていく。食MAPロゴ

成人の食塩摂取量は目標値より高水準

 厚生労働省が定める日本人の食事摂取基準では、成人男性の1日の食塩摂取量の目標値を7.5g未満、女性は6.5g未満と設定しており、これを下回ることが理想とされている。しかし、令和元年の国民健康・栄養調査によれば、日本人の平均摂取量は男性10.9g、女性9.3gと、依然として高水準にある。

 こうした背景から、減塩商品の食卓出現は長期で拡大しており、とくに塩分を多く含む調味料のカテゴリーにおける増加が大きい。中でも醤油は、日本人の食生活に欠かせない調味料でありながら、減塩化が進んでいる代表的な商品である。

 食MAP®データから、減塩商品全体のTI値を見ると、20年前と比べ約3.7倍に増加し、とくに醤油は2024年のTI値が29.1となり、他カテゴリと比べて増加幅が最も大きいことがわかる。直近における大きな増加は見られないが、すでに家庭内へ浸透していることも推測できる。

 食MAP®データによると、醤油は調味料の中でも食卓出現頻度が最も高いため、減塩化のインパクトが大きいこともその背景にありそうだ。そのほかに、「カップ・インスタント・惣菜等」が直近で増加している点も興味深い【図表1】

【 図表1】減塩商品出現TI値

減塩醤油が使われるメニューの傾向

 増加幅が大きい減塩醤油が使用される具体的なメニューについて分析すると、いくつかの興味深い傾向が浮かび上がる。

 減塩醤油を使用したメニューの構成比が、醤油全体と比べて高いものとして挙げられるのは、目玉焼きや冷奴、かけご飯、刺身、中華点心(蒸し)といった、個人が食卓で“つける・かける”などの味付けをするいわゆる“卓上調味”系のメニューである。

 減塩を気にしている特定の家族がいる場合などに個人のニーズに合わせて味付けが可能なため、減塩醤油と親和性が高いことが考えられそうだ。とくに、手軽なかけご飯や冷奴への使用割合が経年で増加している点も特徴的だ。

 一方で、野菜の煮物・炊き合わせやおひたし、温かい和風麺などの調理時に一括で味付けをするメニューでは、減塩醤油の使用構成比が醤油全体と比べ低い傾向となる。「家族全員が同じ味を共有する」メニューに対して、減塩醤油を使用することで従来の慣れ親しんだ味が変わってしまうことへの抵抗感などがあるのかもしれない【図表2】

【 図表2】減塩醤油の使用メニュー傾向

 こうした現状から“卓上調味”による日常食卓へのさらなる浸透とあわせて、調理時の味付けでも満足できる減塩醤油の訴求もポイントとなりそうだ。

 コクや旨味、風味などの掛け合わせによって味の厚みを補い、減塩でありながらも満足感のある味づくりを実現するなど、双方への利用拡大を実現する提案が求められる。

減塩商品の売場事例

 健康維持につながる食品の機能性や安全性への消費者の関心は依然として高く、そのひとつとして減塩タイプの商品も着実に成長している。

 最近の店舗では、糖質オフやカロリーコントロール、有機食品といった関心の多様化に伴い、定番売場でそれぞれのニーズに応じた食品を訴求する例が増えている。なかでも最近の新店から「減塩」の訴求に注力した事例を見ていこう。

ヨークベニマル古河店の減塩市場
ヨークベニマル古河店(茨城県古河市/2025年2月オープン)では、減塩市場の中心となる基礎調味料の定番売場に「減塩」のスポッターを掲示。付加価値商品をわかりやすく陳列する
ヤオコー学園前店の塩コーナー
ヤオコー学園前店( 千葉市緑区/2024年12月オープン)では、塩コーナーで減塩タイプを展開するほか、隣接して減塩タイプの塩こんぶを展開するなど、ニーズに合わせた選択肢を提供
マックスバリュイオンタウン楽々園店のインスタント味噌汁売場
マックスバリュイオンタウン楽々園店(広島市佐伯区/2024年12月オープン)では、やはり減塩商品が多いインスタント味噌汁売場で、オリジナルブランドの商品を取り揃える
イオンスタイル伏見桃山のだしコーナー
イオンスタイル伏見桃山(京都市伏見区/2024年10月オープン)では、だしコーナーで食塩無添加商品を品揃えするほか、個食用のうどんスープでも減塩商品を展開する
コープ幕張駅北口店の醤油の定番売場
コープ幕張駅北口店(千葉市花見川区/2025年2月オープン)では、醤油の定番売場に減塩商品を差し込むかたちで展開。このほか有機原料を使った商品なども揃える
フードスクエアカスミ八潮大曽根店のチーズコーナー
フードスクエアカスミ八潮大曽根店(埼玉県八潮市/2024年11月オープン)では、チーズコーナーで塩分カット商品を展開するほか鉄分強化チーズやチーズデザートなどを取り揃える
平和堂守山小幡店のうどんコーナー
平和堂守山小幡店(名古屋市守山区/2024年11月オープン)では、塩分ゼロの生うどんを展開。健康志向層に向けて糖質カット商品も展開する
原信呉羽店の「Hana-well」コーナー
原信呉羽店(富山県富山市/ 2024年11月オープン)では、オリジナルブランド「Hana-well」コーナーを設置し、塩分を控えた白菜漬けを展開。その他のこだわり商品と併せて展開する

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