「売れるパッケージデザイン」を生み出すために必要な視点とは何か
ヒット商品には往々にして、その魅力を端的に伝える優れたパッケージデザインが施されている。パッケージデザインにも「売れる条件」はあるのか。食品包装資材専門商社である折兼ホールディングス(愛知県/伊藤崇雄社長:以下、折兼)のマーケティング部 執行役員兼SMB事業部部長の梅澤朋央氏に、食品のパッケージデザインのトレンドと展望、そして売れるデザインの要諦を聞いた。
「ロジカルなデザイン」が商品の価値を引き出す
近年の訪日外国人の増加に伴い、食品パッケージ業界でもインバウンド需要が高まっている。折兼では、とくに駅弁や珍味といった商品において、外国人にもわかりやすく訴求できるようなパッケージデザインの依頼が増えているという。
一方で、原材料価格の高騰を背景に、食品メーカーなどからは、コスト上昇に対応しながらも品質や機能を維持したパッケージの提案を求める声が寄せられており、パッケージメーカー側でも対応が迫られている。
こうしたインバウンド対応やコスト制約など、パッケージに求められる役割は広がっているが、「売れるパッケージデザイン」には、ある共通点があると梅澤氏は指摘する。それは「商品の世界観を的確に表現し、その価値をわかりやすく伝えること」だ。たとえば高級な商品であれば、上質な素材や洗練されたデザインで高級感を演出する。健康志向の商品であれば、自然を想起させる素材やシンプルな色使いなどが効果的になるという。

「パッケージには、その商品が消費者に『約束すること』をシンプルに伝えるという役割がある。色、フォント、素材は、その“約束”を視覚的に表現するための主要な要素のひとつ」と梅澤氏は説明する。ただし、デザインを依頼するクライアントに対しては、「希望する色やフォントの指定よりも、その商品が生まれた背景や他商品との関係性など、その商品らしさを伝える情報の共有を重視してほしい」と提言する。こうした情報の粒度が高ければ高いほど、デザイナーは商品コンセプトを最大限に引き出すパッケージデザインをつくることができるというわけだ。
もっとも、商品の売上は販促キャンペーンや市場環境など複合的な要因により左右されるため、パッケージデザインそのものが売上に与える影響を定量的に測ることは難しい。
しかし梅澤氏は、「ターゲットや購買行動に基づいて、商品が選ばれやすくなるよう論理的に設計された“ロジカルなデザイン”を実現することは可能だ」と強調する。
こうした「ロジカルなデザイン」を実現するために、折兼ではクライアントへの丁寧なヒアリングからプロセスが始まる。「誰に、どのような体験を提供したいか」を明らかにすることが、ロジカルなデザインを構築するうえでの出発点となる。そこから、ターゲット層の細かな分析や購買行動の把握、競合商品との違いの明確化など、緻密な調査に基づいてデザインを組み立てていくのが折兼の特徴だ。
梅澤氏は「クライアントから継続的に発注をいただけているという事実は、われわれが立てた仮説に基づいて設計したパッケージが市場に受け入れられていることの証左」と自信を見せる。