中小小売が生き残るために必要な「クローズアウトモデル」とは何か?
小売業界はいま転換期!
小売業界は現在、大きな変革の時期を迎えている。大手チェーンストアの攻勢、ドラッグストア(DgS)の食品分野への進出、人手不足、最低賃金の上昇など、多くの問題が山積している中、とくに中小小売業にとっては、これらへの対応が生き残りをかけた重要な課題となる。
「利は元に有り」という古くからの商売の原則に立ち返り、中小小売業が短期間で競争力を獲得するための戦略、とくに「クローズアウトモデルの活用」について解説する。
まず、前回まで5回にわたって解説した「ユニット・コントロール技術」を通じて死に筋商品を減らし、売れ筋商品を増やすことが重要だ。この過程で、POSデータの分析や数量管理能力を身につけると同時に、集客力のある低価格商品の確保として、「クローズアウト商品」を活用すべきだ。クローズアウト商品の活用を戦略的に進めることで、独自の価格競争力を獲得することが可能となる。
クローズアウト商品の発生原因
小売業界が長年続けてきた独特の商慣習や構造的問題、季節・天候要因、返品などから、一次的な在庫のだぶつきがメーカーや卸では発生してしまう。これら商品は「クローズアウト商品」といい、在庫処分品として安く仕入れることができる。
大手小売業の返品制度は小売業者のリスク軽減につながる一方で、メーカーや卸売業者に大きな負担を強いている。また、不正確な需要予測による過剰発注や欠品の頻発、メーカーから小売店舗まで在庫の可視化が進んでいないことも原因だ。
日本の小売業界特有の問題としては、セルイン(入荷ベース)でのリベート体質や建値制度がある。この慣行により、小売業者は実際の販売量以上に仕入れるインセンティブが働き、結果として過剰在庫を抱えることになる。さらに、フォワードバイイング(期末などに低価格で大量に仕入れる行為)も、クローズアウト商品の発生要因の一つだ。
将来の需要を見込んで低価格時に大量に商品を仕入れる行為は、ハイ&ロー戦略となり、より在庫管理が複雑化し、物流や店舗作業の生産性の悪化要因にもなる。
加えて、2分の1ルールや3分の1ルール※、さらには季節商品や流行商品のライフサイクルの問題がある。これら商品は、賞味期限が短くなることや、シーズンや流行が終わると急速に価値が下がる。その結果、在庫処分の必要性が生じ、これらの商品がクローズアウト市場に流入することになる。
※製造日から賞味期限までの期間の1/3を過ぎた商品は、小売店への納品が避けられる
とくに日本の大手小売業の返品は酷く、DgSは商品の品種によっては納入金額の4分の1を返品している。返品に慣れた大手小売企業は、売り切る力をなくし、ベンダー依存が加速し、競争力を失っていく。衣料品撤退をはじめとする総合スーパー(GMS)の凋落などは、この商品管理の問題に起因する。
メーカーがリベートなどで価格拘束力を持ち、小売業を「ベンダーロックイン」状態にすることで、競争力が失われていくのである。現在のDgSのビューティ系商品はその典型であり、今後DgS業界が「自社で売り切る力」を失っていけば、GMS同様の道を歩むことだって考えられる。それを逆手に利用するのが、中小小売業の生き残り戦略の一つになるのだ。
クローズアウトモデルの実践
クローズアウトモデルを成功させるには、いくつかの重要な要素がある。
まず、強力な仕入れネットワークの構築が不可欠だ。地場の問屋や都市圏の問屋街、取引先の営業担当者との関係を深め、クローズアウト商品の情報をいち早く入手できる体制を整えたい。
次に、柔軟な売場運営が必要である。クローズアウト商品は通常の商品とは異なり、
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